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オランダ法準拠SPAにおける保証責任の制限:日本企業が知っておくべきポイント

15 december 2025
/  Ken Watanabe
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Ken Watanabe

オランダ法準拠SPAにおける保証責任の制限:日本企業が知っておくべきポイント

日本企業がオランダのM&A市場に参入する際、シェア購入契約(SPA)の構造自体は日本の契約書と大きく変わらないように見えます。しかし、オランダ法の下で一般的に用いられる保証Warrantyの責任制限は、日本の実務とは大きく異なり、買い手が実際に得られる保護範囲に強い影響を及ぼします。

本ブログでは、日本企業が誤解しやすい代表的な制限ポイントを解説します。

  1. 保証期間の短さ想定より早く責任が消滅する

オランダでは、保証の存続期間が比較的短く設定されるのが一般的です。

  • 事業保証:12〜24か月
  • 税務保証:5〜7
  • 基本的(ファンダメンタル)保証:最大7年程度

日本のSPAに見られるような曖昧または長期の期間と比べると、保証保護が期待より早く終了するという印象を持つ買い手が多く見られます。

期間が過ぎた後に問題が発覚しても、原則として買い手は請求できません(ただし詐欺や故意の不履行がある場合は例外です)。

実務的影響:

日本企業は、ポストクロージング直後から集中的なモニタリング体制を敷き、問題を早期に発見できる仕組みを導入する必要があります。

  1. 厳格な通知義務:期限を過ぎた途端に請求権が失われる

オランダのSPAでは、通知(Notice)義務が非常に詳細に規定されます。

  • 問題を発見してから 一般的に20〜60日以内 に通知が必要
  • 通知書には、違反内容および損害額の概算を具体的に記載する必要がある

日本で一般的な「遅滞なく通知」といった抽象的な基準よりもはるかに厳格です。通知が遅れた場合、責任があるにもかかわらず請求が失効することもあります。

ただし、通知期間や通知遅延時の効果は市場慣行で標準化されているものの、交渉が不可能というわけではありません。

実務的影響

買い手は、社内での報告・エスカレーションフローを明確化し、期日管理を徹底する内部体制の整備が必要です。

  1. バスケットおよびデミニミス小規模な損害は請求できないことが多い

多くのオランダのSPAには複数の金額閾値が設けられています。

  • デミニミスDe minimis): 少額損害は無視
  • バスケット控除方式Deductible): 一定額までは買い手が負担
  • ティッピング・バスケット 閾値超過後は全額請求可能

日本のSPAでは金額閾値が少なかったり低額であることが多く、オランダの市場慣行では小規模損害の多くが請求対象外になる点に注意が必要です。

もっとも、これらの閾値は市場慣行ではあるものの、合理的な根拠を持って交渉すれば、見直しが可能なケースも多いです。

実務的影響

保証条項の文面のみで判断せず、実質的なリスク露出を数値化して把握することが重要です。

  1. 責任上限Liability Caps):売り手の最大負担額は限定される

オランダの売り手が無制限の責任を受け入れることはまずありません。

  • 一般保証購入価格の1030%
  • 基本保証・権原保証購入価格の100%

さらに、特定補償Specific Indemnityについては、上限やデミニミスバスケットが設けられないことが一般的です。

実務的影響

買い手が実際に回収できる金額は、しばしば購入価格の一部に限られるため、評価Valuationにも影響します。

  1. Fairly Disclosed」概念開示されていれば保証違反にならない

オランダのSPAでは「フェア・ディスクロージャー」の概念がよく用いられます。

データルームにおいて、十分明確に開示されている事項は保証違反として請求できないとされます。

日本では契約書本文の文言に重きを置く傾向がありますが、オランダではデータルーム開示が実質的なリスク配分の中心となります。

実務的影響

買い手は「開示されている請求できない可能性が高い」という前提で、開示資料を徹底的に精査する必要があります。

  1. 損害控除Nettingメカニズム実際の回収額が縮小する

オランダのSPAでは、買い手の損害額を次のもので控除する条項が一般的です。

  • 保険金
  • 節税効果
  • コスト削減効果
  • 第三者からの補償

過度な補償を避けるための仕組みですが、結果として回収額が大幅に減少することがあります。

実務的影響:

表面的な保証額だけでなく、実際に回収可能な金額の見極めが不可欠です。

  1. オランダ民法の影響:因果関係と証拠の負担が重い

SPAで排除されていない限り、オランダ民法の一般原則が適用されます。

  • 損害との因果関係が必要
  • 買い手には損害軽減義務
  • 場合によっては法定の「クレーム通知義務(klachtplicht)」も適用

実務的影響:

買い手は、証拠管理・記録保持・迅速な対応など、請求を維持するための実務 diligence が要求されます。

結論:オランダの保証は「書いてあるほど強くない」ことを理解する

オランダのSPAにおける保証は、リスト上は包括的に見えても、

実際には 期間制限・通知義務・金額閾値・責任上限・開示・損害控除 といった各種制限によって、

その効力が大きく絞られます。

日本企業にとって重要なのは、これらの制限を正しく理解し:

  • リスクを正確に評価し、
  • 適切な保護条項を交渉し、
  • クロージング後の不測のトラブルを避けること

です。

これらの市場慣行を理解しておけば、オランダでの買収交渉はよりスムーズに進み、

買い手としての実効的な保護を確保することができます

 

 

 

渡部 剣

Japanse desk
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渡部 剣(Ken Watanabe)

Ken

Watanabe

Japanse desk, Ondernemingsrecht, M&A / Fusies en overnames
会社法, M&A

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